オスカー・ワイルド, 建石 修志, 曽野 綾子
幸福の王子

大人になって読んでみたら、違った・・・!

子供の頃に、たぶん誰でも一度は読んだり、
おはなしを聞いたことがあるのでは。

私も幼稚園生のときに読んでもらったのを覚えていたのですが

確か「ツバメが王子様の宝石でできた目を、貧しい人にあげる話」だったよなぁ・・・両目がなくなっちゃってかわいそうと思ったもんなぁ・・・くらいのものでした。

今回、改めて読んでみて、ビックリ。

私が子供の頃に読んだ『幸福な王子』と、

原文に忠実な新訳であるこの『幸福の王子』は違いました。

冒頭と結末に市会議員が出てくる(私が読んだものには出てきませんでした)のですが、
彼が結構、物語において重要人物だったり

結末も私が知っているものより続きがあったりしました。

そして、私が子供の頃に持った印象や感情よりも

より深く、より痛く、『幸福の王子』の物語は胸に響きました。

曽野 綾子さんのあとがきも素晴しく、

平和や愛を達成すること、そしてその対価について、深く考えさせられます。

そのあとがきの中にも書かれていますが、

原作者のオスカー・ワイルドは『幸福の王子』を
「子供の心を持った十八歳から八十歳の人たちのためだ」と語っています。

曽野さんはそれを、日本では「八歳から百八歳までの読者」としています。

今回読んでみて思ったのは、確かに『幸福の王子』は大人のためのものだということです。

ただ、大人になってから読むと、
感動して、自分もこうしよう! こういう気持ちでいよう! と思うのではなく

自分を省みて、「私には無理だな」と思ってしまいます・・・。
だから余計に、この物語を読むと胸が痛くなります。

ちなみに、装丁と挿画が、とても上品で高級感があります。
美術館の絵画のような崇高さもあって、物語に合っています。

丁寧に、大切に扱わねばと思う一冊です。